器用貧乏未満

限界オタクのとっちらかった興味

『いだてん』は確かに大河ドラマだった

二週間の放送延期を経て、『麒麟がくる』が放送された。

自分で言うのもなんだが、わたしは中学からのまあまあディープな戦国オタクである。
明智光秀は最推しの戦国武将とのつながりも深いため、キャストが発表されるたび
萌えで憤死するのでは?っていうくらい期待していた。

放送延期が知らされた時は別の意味で憤死するかと思ったけど。



麒麟がくるの感想はまた改めて記すが、初回拡大75分がマジでマジで体感10分だった。


解説に進行を任せすぎず、最低限の会話でだんだん展開が広がっていくさま。
真田丸』『直虎』でも描かれた、国衆の関係、人身売買、戦災孤児のえげつない描写。
智将のイメージが強い光秀が、関所でほぼカツアゲみたいなってる民をかばうことなくスルーしていくところも
京の街中で不自然に道に転がっている(おそらく死んでる)人が見えてないかのように通り過ぎるさまも
そうそうこういう神も仁もない世界観、見てみたかった!とうなるものばかりだった。


毎年大河ドラマツイッターで実況しているのだけど、TLの歴史オタクもほとんどが総じて『麒麟がくる』初回には大いに満足していた。

例年、大河ドラマの放送が始まると、マスメディアが「視聴率が~~~NHK関係者によると~」とかクソ面白くない便乗目的のクソほども中身のないテンプレ批判記事を載せたりしているのだが、今回はけっこう好意的な(??)記事が多かった印象だ。


www.asahi.com

headlines.yahoo.co.jp





昨年の『いだてん』と絡めた記事もあった。

news.livedoor.com





ハ!?!?!!?!?!!!!!!!???
いやいやいやいやいやいやいやいや


いやいやいや!?!?!!?!?!?!!


何言ってるんだ???



あんな、あんな近代の激動とスポーツの高揚感を濃密にえがいた大河ドラマ『いだてん』が????
失敗作??????気は確かか?????


確かに視聴率はワーストだったかもしれない。


いやでもさ、そもそもいだてん放送されてんの2019年だよ。BSで日曜18時から放送してるんだよ。
ワンセグ搭載のガラケーでも、スマホでも見れるんだよ。
オンデマンド配信もされてるし、DVDレコーダーが発売されて半年とかでもないんだよ。

なのに、いまだに、いまだに
調査対象は選ばれてる世帯だけで????
端末は専用の機器をつけたテレビだけの???????
世論調査よりも超絶対象者が限られてる視聴率ってやつが????????・
そんなに作品の優劣を決めるうえで重要なの??????
ハ????????????


やば 昭和の感覚いつまで持ってんの 令和やぞ???
寝言は寝て言え





NHKは、届いた問い合わせの内容や件数などを週間・月間でまとめている。

www.nhk.or.jp



それを見ると、いだてんが放送されていた2019年6月、いだてんに関する反響は1万2000件をこえているんだぞ。
同時期放送されていた『なつぞら』は全26週の放送で反響は7487件。

最終回を終えた後の『週間みなさまの声』でもその反響の良さはうかがえる。
2019年12月9日~2019年12月15日の問い合わせを見てみると、
大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」は15日の放送が最終回でした。16日まで
の2日間で好評意見を中心におよそ980件の反響がありました。』
と、週間で最も反響の多かった番組なのだ。

2019年12月16日~2019年12月22日も同様だ。
反響の多かった番組として、最終回「時間よとまれ」が紅白に続いて2番目に支持されている。
再放送希望の多かった番組でも7番目だ。



「失敗作」であればここまで反響がNHKにあるだろうか。不思議だなあ~~~~~(すっとぼけ)





いだてんは、近代の大河ドラマだ。だから華々しき武者たちの合戦シーンも、血みどろの戦いもない。
戦国時代や幕末のように、だれもが知ってる名だたる英雄たちも出てこない。


それでも、金栗四三が日本人としてオリンピックに出場するまでの艱難辛苦。欧米選手には追い付けない現実。
努力の果てに完走できないみじめさ。帰国してからのバッシング。
素足をさらけ出して走れない当時の女生徒の葛藤。
災害でスポーツ選手としての華やかな未来を奪われた花嫁。
スポーツが戦争に動員されていく世の無常さ。

名だたる英雄ぞろいの大河ドラマじゃないからこそ、名もなき民衆と世情の揺れ動きが刺さる大河ドラマだった。



ここまで書いといてなんだが、実は私はいだてんを全放送見ているわけではない。
ベルリンオリンピック前後や第二次世界大戦中の話あたりなのだが、仕事の忙しさもあるのと、精神的な意味で見ることができなかった。



いだてんは近代の大河ドラマだ。明治から昭和にかけて、オリンピックにかかわった人々のドラマだ。
近代なので当時の音声や映像資料が残っているため、作中にもそれがナチュラルに出てくる。
現実の映像がドラマという虚構を演出しているのだ。
これこそまさに近代大河ドラマをするにあたって最高の醍醐味だと思う。
だって明智勢がリアルタイムで本能寺焼いてるドキュメンタリー映像とか市民が投稿したインスタグラムとかないでしょ。

その演出も、いだてんを鑑賞するうえで本当に競技の実況を見ているみたいでとても面白かった。




だからこそ、私の祖父母の生まれた直後や、彼らの青春と重なる戦時中の描写がどうしても見れなかった。

私の父方の祖母は当時の人にしたら長身で、170㎝ある。97歳になったけれど足腰もびっくりするほど丈夫だ。
けれど離島に生まれているから、小学校一年生までしか通っていない。

いだてんに出てきた人見絹江や前畑秀子はちょうど祖母と年代が近い。当時の女性としての生き方は勝気な祖母にも重なるところがあったと思う。
その祖母の弟、私の父の叔父にあたる人も、いだてんに出てきた小松勝と読みは違うけど下の名前が同じだ。
彼も小松勝とおなじように、戦場から帰ってくることはなかった。


母方の祖母はもう鬼籍だが、10人兄弟のいちばん上だった。第二次世界大戦でいちばん下の弟以外戦争で亡くしている。
3番目の弟は(詳細は伏せるが)、体調不良で軍人の命令を遂行できなかったため、暴行を受け、その傷で亡くなっている。
認知症が進むたび、その弟の名前をうわごとのように呼んでいたことはいまでも覚えている。



いだてんは近代の大河ドラマだ。

時代が現代に近いぶん、鎌倉時代や幕末のような「歴史もの」としての重厚感はないかもしれない。
ただそのぶん、リアルさは強烈なのだ。祖母たちの昔話が、青春が描かれている。
東京オリンピックの年に生まれた叔父や、もうとっくに小学校に入学している両親の影をドラマに見てしまう。

大河ドラマ『いだてん』は重厚感を求める「歴史もの」ではなくとも
「歴史とは名もなき人々の生のリレーでもある」と気づかせてくれた大河だったように思う。
今まで見てきたどんな大河ドラマよりも、登場人物と自分の命の距離が近かった。

ラソンと同じように完走したものでしか、オリンピックに参加したことがあるものにしか見えてこない景色がある。
たとえ視聴率が歴代最低だったとしても、視聴率の一端を担っていたかもしれない1人として言いたい。

いたてんは確かに大河ドラマだった。


最後にこのいだてんへの愛があふれる記事を引用して終わりたい。

news.yahoo.co.jp